大阪高等裁判所 昭和43年(ラ)267号 決定 1968年9月19日
抗告人 伊藤清吉
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣旨及び理由は別紙のとおりである。
当裁判所は次の判断を附加するほか、原審判と同一の理由により、本件名の変更の許可申立を許すべきでないと解する。
一、戸籍法一〇七条二項にいわゆる正当な事由の要件を余りに寛やかに解するときは、人の同一性の認識を害し、ひいては社会一般にも支障を与えるので、これに或る限度の制限を設けるのは已むを得ないことであって、抗告理由の末尾に改名を単に個人的の問題であるかのごとく論ずるのは失当である。この見地において本件抗告の理由を精査するに、抗告人の名を以て著しく不適当なものと見るには当らず、結局は主観的な好き嫌いの範囲を出ないものと解するほかはない。また当裁判所は「清吉」なる名が抗告人の言うほど世間に少ないものと考えないのであるが、例が少ないこと自体が直ちに改名の理由と見ることもできない。また記録添付の児童作文を通読してみても、出題の意図について児童がどのような暗示を受けたかも問題であって、これを有力な資料と見ることはできない。
二 神官僧侶となるとき及びこれをやめるときの名の変更の要件を通常の場合に比して若干寛やかに解することは現時の社会通念に基づくものであり、その他抗告人の憲法違反の主張はいずれも独自の論であって採用できない。
以上の次第であって本件抗告は理由がないので、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 沢井種雄 裁判官 知識融治 田坂友男)
<以下省略>